野生の島のロズを見たのでその感想(ネタバレあり)


「野生の島のロズ」を観た。


公式サイト


 自分は「ロボットが」「他者のために貢献し」「そして壊れてしまう」というシチュエーションにひじょーーーに弱いため、(これ観たら絶対泣くだろうなぁ〜)と思っていたので楽しみにして観た。


 この映画ではヒトのために作成されたお手伝いロボット(ロズ)が野生の動物しかいない場所に遭難してしまい、自らのプログラムされた使命(仕事の完了)を果たすためにロズが引き起こした事故によって親を失った雁の子供(キラリ)を狐(チャッカリ)と育てていくうちに、高度なAIによって発生した感情とプログラムとの葛藤を経て雁の子供と野生の島の動物たちに愛情を抱いていく様子が描かれている。


 ロボットも動物も自らにコーディングされた命令によって動く。ロボットはプログラムに、動物は生存本能に、だ。


 この映画ではそのプログラム(生存本能)を感情という別ベクトルの力によって変更できることを示唆している。


 実際、ロボットはプログラムされた事しかできない。作中に出てくる他のロボットはヒトからロボットとして扱われているが故にプログラム外の行動を起こしていない。


 しかしロズはチャッカリという相棒と守るべきもの(キラリ)を得た事で他のロボットと異なる感情を学んでいく。


 ロズは「仕事を完了させるために」雁が大人になるために必要な事をキラリに試行錯誤しながら教えていく。餌を獲ること、泳ぐこと、飛ぶことの3つだ。


 この仕事の完了にチャッカリが一役買っている。チャッカリはこの2人とはほとんど関係がないのだが(実際序盤のチャッカリはロズと共に行動していれば、他の動物に襲われることはないし、安全な場所と食料を十分に確保できるという打算的な目的で近づいている)、ロズとキラリのやり取りを見ていくにつれ、そしてロズの唯一の相談役となったために自らが抱えていた「嫌われ者故の孤独」に気がつき2人に寄り添うようになっていく。


 そうしたやり取りを経てロズは「仕事の完了」を迎えキラリの渡りを見送り、返品プログラムを実行し元いた工場に帰ることを選択しようとするのだが、自らのプログラムに何か別の感情が発生していることに気がつく。


 それはキラリを育て、チャッカリとのやり取りによって芽生えた愛情だった。ロズはキラリが渡りを行う前に伝えられなかった「愛していた」という感情を伝えるため一度は返品プログラムを実行したものの島に残る事を選択する。


 この愛情はキラリやチャッカリだけでなく他の動物たちにも向けられる。ロズは冬眠すらできないほど凍えてしまう吹雪の中、島中の動物たちを可能な限り安全な場所にかき集め、春がくるまでは争わずに過ごして欲しいと動物たちに頼む。


 この辺りは原作がアメリカ文学であること(もしくは制作会社の)ーキリスト教のー影響を感じさせる。そんな事を動物たちが聞くわけがない…というところでチャッカリのー嫌われ者が愛と友情に寄って変わった自らをー動物たちに見せ、得意の能弁によって動物たちはロズの頼みを守るようになる。


 この事がきっかけで終盤のロズを回収しにきたロボット会社から動物たちが協力して戦うようになるのは分かりやすく、良かったと思う。


 終盤、渡りから帰ってきたキラリに「愛していた」と伝えるために一度はロボット会社の回収を逃れ撃退するロズ。しかしロボット会社との戦いによって生じた島の惨状を見て「何度もロボット会社からの襲撃を繰り返させない」という合理的な判断を行い自ら会社に帰る事を選択する。

 この時、島の動物たちに「これは私にとっての渡りです」と説明することで、ロズがやがて島に戻る事が示唆される。


 …のだが、劇中内ではロズは人間社会で農産物の作業に従事し「渡り」により島からの移動が可能なキラリとのみ再会をしている。ここは恐らく原作がロズが人間社会に戻るところで終わっているため(そして人気が出たなら続編を作るため)島に戻るシーンは描かれなかったのだろうが…個人的にはロズには島に戻ってきてチャッカリと再開して欲しかった。


 本作はロズとキラリの「家族愛物語」としても見れるが、ロズとチャッカリの「はみ出しもの同士の友情物語」としても見れ、個人的には後者の方にグッときていたのでやっぱりロズには島に帰ってきて欲しかったかなーと思った。


 あと個人的に「愛があれば電源の切れたロボットも動き出す」というのはちょっと納得がいかなかった。そこは偶然ロズの電源スイッチをオンにしてしまうとか、そういう理由が欲しかった。悲しいかな愛だけで電気製品は動かないのだ。愛だけで動くなら永久機関が完成しちまうからなぁ!最も原作が児童文学のようなので、その辺はファジーにしているのだろうが……。


 現実では、肉食動物と草食動物が同じ場所に住むことはできないし、ロボットもプログラムされたこと以上を超える事は「まだ」難しいだろう。しかし人間なら?この映画はロボットと動物というある種のプリミティブな存在から「人間の在り方」を問うているように思えた。


 動物たちのCGの動き、ロズの動きは流石のドリームワークスと言ったところでCGアニメ映画としては結構良かった方だと思う。


 吹き替え版を視聴したが、特に吹き替えに問題はなかった。配信が行われたら原語版でも再視聴したいと思う。(というのも映画を観るぞ!と決めた時にはもう既に配給が殆ど行われない状態になっていたので字幕版を見る時間がない、悲しいね😢)