昔からタバコを吸う、という行為に忌避感はなかった。まぁ時代が時代だったこともあるだろうが(今では信じられないが、電車内にタバコの吸い殻入れが置かれていた様な頃だ)、私にとっての喫煙という行為は「大人が吸っている煙たい棒」であって、身近にある現象でもあった。

 時代が進み、タバコは「肺がんの原因になる」と言われ、タバコの税率は上がっていき、タバコが吸える場所は減っていき、路上タバコの数は減っていき…と、タバコは「百害あって一利なし」という嗜好品にしては厳しい評価が下される様なモノになっていった。そのことに対しては「まぁ、そうでしょうね」と思う。実際のところ、タバコを吸うという行為は寿命を縮める事に変わりはない。タバコを吸う事でニコチン中毒や肺に対するダメージがあるリスクは、もはや常識レベルになっている。

 そんなことを知っていながらタバコを吸っていた時期が私にもあった。単純にタバコの匂いが好きだったのもあるのだが、当時はストレスに参っていて、もしそれによって、どうしようもない閉塞感が緩和されるなら?そう思って手を出した。

 結論から言うと喫煙はストレスの緩和にはならなかった。結局ストレスというものは発生源があって、その発生源に対して「自分がどの様な対応を取るのか」で解消をしていくもので、嗜好品はただ一過性の誤魔化しをしているだけに過ぎない。

 そんな風に結論を出したけど、吸っていたタバコのその思い出話をしていく。

・キャスターマイルド
 紅茶の匂いがするタバコ。紅茶が好きだったのでよく吸っていた。肺に入れると不味いよなぁ、と思っていたのでタバコを吸う時は口腔喫煙(所謂フカシ)を主にしていたのだが、このタバコは口腔喫煙によく合うと思う。タバコの匂いの中に微かに紅茶の甘い匂いがするのでこりゃ美味いなと吸っていた。

・ピース(スーパーライト)
 これも紅茶の匂いがするタバコ。フィルターが厚めに作られていて吸いにくかったのでフィルター部分をちぎって吸っていた思い出がある。本当は缶ピースを買いたかったのだが、私の喫煙サイクルは週に1本吸うか吸わないかだったので、50本も入っている缶ピースを吸い切れる自信がなかったし、持ち運びもめんどくさそうだったので普通の箱のこの商品にした記憶がある。ただキャスターマイルドの方が個人的に甘くて好きかなぁと思い、結局全部吸う前に捨てた覚えがある。

・ピアニッシモ・アリア(メンソール)
 メンソール系のタバコはどうだろう?という疑問と臭いを消すために消臭剤を振るのが面倒になってきたので余り匂いが服に付かないとレビューされていたので手を出したもの。正直あまり美味しくなかった。いい意味でタバコっぽくない匂いがする様にデザインがされていて、タバコの匂いが好きな自分には合わなかった。メンソールのひんやりする感じも好みじゃなかった。これも吸い切らずに捨てた覚えがある。

 今タバコは吸っていない。結局嗜好品にしては私の置かれていた環境だと吸うタイミングが無さすぎたし(週に1・2本吸うか吸わないか程度の頻度だったので1月に1箱消費できるかできないか程なので、めちゃくちゃコスパがいいなとすら思っていた)、タバコを吸う事で多少の落ち着きは得られたものの、最も解消したいストレスの緩和には役に立たなかったのでハマる前に辞めたという話になる。

 ちなみに「嗜好品で」「ストレス解消で」よく嗜まれるものに酒があるが、これは今飲んでいる薬と合わないので飲み会といったどうしようもない時以外では飲んでいない。

 後は酒を飲んだらその勢いで吊りそうなのが怖かったから、というのもある。「縄は既に用意しているから後は実行するだけ」という救済案(後片付けが大変なんだから救済でも何でもない"ただの現実逃避")を常に考えていた様な状態だったから、酒を飲むのは本当に怖かったのだ。今でもタバコより酒の方が怖い。